旅行と留学・ワーホリのちがい ~世界一周からワーホリへ

旅行か留学かワーホリか。

海外に出ようと思ったとき、さまざまな選択肢が頭に浮かぶでしょう。

私は勤めていた会社を退職した後、約11か月かけて世界一周旅行をし、今はワーホリビザをとって、オーストラリア南東の都市・メルボルンにいます。
しばらくは語学学校に通い、その後仕事をしたり、オーストラリア国内を旅行したりするつもりです。

旅行と留学・ワーホリでは、何が違うのか。

私の海外での体験をもとに、その違いをご紹介します。

世界一周と言語


 
私の世界一周は中国から始まり、東南アジア、ヨーロッパ、南米、北米と移動し、アメリカで旅を終えて帰国しました。

アジアで暑さとエネルギーに圧倒され、ヨーロッパの美術館では名画と出会い、南米パタゴニアの風に癒され、メキシコで食文化の多様性を知った。
新しい景色にぶつかり、刺激を受け、外国を通して自分や日本について考える日々でした。

旅の間、私が話していたのは英語です。
私の英語力は、旅行に最低限必要な会話はできるものの、雑談や日常会話を続けるのは難しい、というレベルです。
それでも世界一周は問題なく終えることができました。

今、ネイティブ・スピーカーよりノン・ネイティブ・スピーカーのほうが英語を話す人口が多いといわれているように、どの国でも観光産業で働く人の多くは英語を話します。
こちらがカタコトの英語を並べても、旅行に関する話題であれば、相手は話の内容を推察してくれます。

英語が通じにくい中国でも漢字を使えばコミュニケーションがとれますし、長く旅をしていればその土地の単語も自然と覚えます。
ボディランゲージや筆談で補えば、意思疎通はできるものです。

「話せない」ことへのフラストレーション

しかし、外国人とコミュニケーションがとれず、もどかしさを感じる場面もありました。

スペインの巡礼路を歩いていたときのことです。
宿で夕食をとっていると、同じ宿に泊まっているイギリス人に、

「築地市場に行ったことがあるんだけど、あれは今、どうなってるんだ」

と尋ねられました。私は知っている単語を並べ、

「え、えっと、東京のポリティッシャンのトップが変わって、フィッシュマーケットが……その……」

と言ったものの、それが限界。
すると日本に来たことのある別の外国人が、「つまり彼女の言いたいことはね」とあとを継いで説明してくれました。

すごく情けなかった。
自分の国のことを自分の言葉で説明できないなんて。

日本について、世界について、無関心でいられないという焦りが生まれました。
同時に、それを説明できる言語能力が、私の目指す「旅」に必要だと思いました。

旅からワーホリへ


 
このような体験は世界一周中に何度もあり、旅を終える頃には、外国語を勉強しようという気持ちが固まっていました。

正直に言うと、英語が話せるのはカッコいいとか、英語が他の言語より優れているとか、そういう気持ちは私の中にはありません。
現実的に、一からほかの言語を勉強するより近道だということと、世界的な通用度から英語を選び、ヨーロッパと比べ仕事が見つけやすそうで、文化的にも興味が持てるオーストラリアに決めました。

ワーホリビザを取得したのは、アルバイトができるため資金面で融通がきき、また、1年という長期滞在が可能だからです。

世界一周中、同じ国に滞在したのは長くてひと月程度でした。
旅をして移動すると、日々新しいものを見ることができます。
しかし表面しかさらっていないのではないかという意識が、常にありました。

ワーホリであれば、じっくりと一つの国を見ることができます。
長期滞在することで、旅とは違う視点が得られるのではないかと思っています。

語学学校で異文化を学ぶ


 
そうしてオーストラリアにわたり、メルボルンの語学学校に通い始め、ちょうど2か月が経ちました。
語学学校はハードですが、幸い先生やクラスメイトに恵まれて、毎日楽しく通っています。

今はアプリやテレビ・インターネットの無料講座も充実しており、日本でも英語の勉強はできます。
しかし、語学学校に通って得られるのは単に英語の知識だけではありません。

「今オーストラリアで何が起こっているのか」
「他の国の同年代の学生はどんなふうに世界を見ているのか」

これは日本を離れ、お互い外国人という対等な立場で多国籍な学生と接しているからこそ、得られる情報なのだと思います。

たとえばマレーシア人の生徒は、自分の国について説明するときに

「自分の国の好きなところは、マルチ・エスニックなところ」

と言っていました。
コロンビア人の生徒は、どんなときにデモやストライキが起こるかという話題になったとき、

「私の国では、権利を得るために抗議活動が行われているの」

と言っていました。

マルチ・エスニック! 権利を勝ち取るための抗議!
他民族国家マレーシア、そして権利や独立のために闘ってきたラテンアメリカの出身だからこそ、自然に出てくる言葉なのでしょう。

たとえ本や映画で知っている知識でも、その国に住む同年代の生徒から聞くと、大きな衝撃を受けます。
私はそんなふうにして今、英語だけでなく、世界を学んでいるのだと思っています。

旅で得られるもの、ワーホリや語学学校で得られるものは、それぞれ違います。
移動によって得られる距離感、長期滞在によって知る社会の変化。
多くの国の比較、一つの国の考察。

どちらも果てしなく面白くて、魅力的で、やめられそうにありません。

(ライター:NAO)